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コンテナに詰めるのは「テトリス」だ—物流の現場で学んだ、数字の嘘と職人の感覚

  • 執筆者の写真: Ayaki Hamada
    Ayaki Hamada
  • 3 時間前
  • 読了時間: 4分


大学で4年間勉強して、海外と繋がれる仕事がしたいと海運を選んだ。

が、蓋を開けたら朝6時から倉庫で草刈機の箱を手で運ぶ毎日だった。隣には歯が欠けたおじさん。正直、毎朝「なんでこんなことしてるんだろう」と思っていた。

ただ、その経験がなければ今の自分はない。コンテナの容積が教科書通りじゃないことも、内寸が船会社によって微妙に違うことも、全部あの現場で体が覚えた。

物流を「面倒な実務」だと思っていた自分が、今はドバイから中東の物流情報を発信している。まさかドバイに来てミサイルやドローンが飛んでくるとも思ってなかったように、人生わからないものだ。



毎日コンテナいっぱいの草刈機

当時、最も扱い量が多かった貨物が草刈機だった。1日40本以上のコンテナを輸出入する中で、草刈機だけで最低コンテナ4本×20営業日、月にコンテナ単位で80本は出ていた。

普通のバラ貨物であればパレットに乗せて積み込むのが通例だ。ところがこのメーカーは「手積み限界まで詰めること」を義務付けていた。パレットなし、手で1箱ずつ運び、コンテナの隅の隅まで詰める。いわゆるテトリス状態だ。

一定数は箱の形が同じだが、微妙にサイズが異なる箱が混在する。そこで小さな油断が生まれると、最後の最後で1〜2箱どうしても入らない、という地獄の事態が待ち受けている。あの絶望感は、経験した人間にしかわからない。




ネットの数字は「最小値」だ

よく物流会社のサイトやAIで調べると、こんな数字が出てくる。

20フィートコンテナは25〜33 m³、40フィートは45〜55 m³。

だが、現実は違う。ギチギチに詰めると、20フィートは最大約35~40 m³、40フィートは約60 m³まで積載できる。これは職人の手積みと緻密な計算があって初めて実現する数字だ。おそらく、テトリスが得意な人間には感覚的にわかるものがある。

さらに言えば、40フィートにはハイキューブ(HQ)と呼ばれる、高さが約30cm高いタイプが存在する。公称容積は約76 m³とされているが、ギチギチに詰めれば最大約80 m³まで積載できる。軽量でかさばる貨物を扱う場合、このHQを選ぶだけで積載効率が大きく変わる。標準の40フィートとHQの違いは「高さ約30cm」だけだ。しかしその30cmの価値を知っているかどうかで、判断が静かに変わる。

机上の数字だけを信じると、本当はできたことを最初から諦めてしまう。それは貨物スペースのロスであり、コストのロスだ。




「国際規格だから全部同じ」という誤解

もう一つ、現場で知って驚いたことがある。

コンテナの内寸はISOで最小値のみ規定されており、メーカーによって若干のばらつきがある。外寸は厳格に統一されているが、内寸はそうではない。この数センチの差が、大型機械や美術品の輸送では死活問題になることがある。

「国際規格に基づいているから全部同じはず」——そう思い込んでいると、実際に詰めてみて初めて入らないことに気づく。その頃にはもう取り返しがつかない。コンテナを手配する際には、必ず船会社から実際の内寸データを取り寄せること。これが現場の鉄則だ。



物流は情報戦だ

私はずっと、物流・貿易とは情報戦だと考えてきた。

コンテナの実容積、内寸の実際の差、手積みで出せる積載率の上限、HQという選択肢——こうした現場の知識を持っているかどうかで、荷主が得をするか損をするかが静かに決まっていく。

面倒な実務として敬遠されがちな分野だが、島国である日本にとって海上輸送は極めてクリティカルなインフラだ。戦略を持って臨まなければ、知らぬ間に損をし続ける可能性がある。

そしてこれは、日本国内だけの話ではない。

ドバイの物流会社は、依頼者が物流を理解しているものとして話を進めてくる。だが素人だと分かった途端、費用項目の明細を開示せず「これはこのくらいが相場だから」と請求を積み上げてくることがある。

やっとの思いで運んできた商品が、最後の最後で余計なコストに食われ、市場での競争力を失って結果的に撤退——そういった話を、現地で何度も耳にしてきた。

このブログは、そういったことが一つでも減るように書いている。


筆: ドバイの運び屋 


参考:コンテナサイズの目安(現場値つき)

一般に公開されているスペックと、現場での実積載最大値を併記しておく。

20フィート(20ft) 外寸:長さ約6.1m × 幅約2.4m × 高さ約2.6m 内寸:長さ約5.9m × 幅約2.35m × 高さ約2.39m 公称容積:25〜33 m³ / 現場実積載最大:約35 m³

40フィート(40ft) 外寸:長さ約12.2m × 幅約2.4m × 高さ約2.6m 内寸:長さ約12.0m × 幅約2.35m × 高さ約2.39m 公称容積:45〜55 m³ / 現場実積載最大:約60 m³

40フィート ハイキューブ(40ft HQ) 外寸:長さ約12.2m × 幅約2.4m × 高さ約2.9m 内寸:長さ約12.0m × 幅約2.35m × 高さ約2.70m 公称容積:約76 m³ / 現場実積載最大:約80 m³

※内寸はコンテナメーカー・船会社によって数センチの差異がある。実務では必ず現物の内寸を確認すること。



 
 
 

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